精神科・心療内科での通常の診療では、必要に応じてくすりも使いながら症状の改善を目指しますが、症状の元となったさまざまな根本的な問題を、時間をかけて話し合うことにより解決していくのが精神療法(カウンセリング)です。
「カウンセリング」という言葉は、幅広い意味で用いられていますが、そのなかでもより専門的な精神療法のうち、いくつかをご説明させていただきます。
精神療法のなかには、何々療法などと名前のついたものが数多くあり、それぞれに特徴があります。どのような問題にどのような治療法が向いているかは、専門家でも判断するのはなかなか難しいものです。
精神療法をおこなう期間は、それぞれのかたのニーズによってまちまちですが、おこなう期間によって長期精神療法と短期精神療法に分けられます。
長期精神療法
長期精神療法は、半年から2、3年という長い期間をかけておこなうもので、当クリニックでは精神分析的精神療法を中心としています。ここで扱われる問題としては、親子や夫婦などの関係がうまくいかないこと、親密な関係をうまく持てなかったり続かなかったりすることなどさまざまですが、ひとりでは解決が難しく、長く続いている問題についてお話を伺いながら解決をめざしていきます。
短期精神療法
短期精神療法は、期間としては3カ月程度のことが多く、職場での対人関係問題など限定した問題を解決していきます。短期精神療法の主なものには、短期精神分析的精神療法、認知行動療法(*1)、対人関係療法(*2)があります。
当クリニックでは、精神分析的な方法を中心として、必要に応じて上記(*1)(*2)のような方法を組み合わせておこないます。
(*1)認知行動療法
うつや不安などの症状にたいして、その背景にあって問題となる思考パターンを「自動思考」と名付け、その自動思考を変えていくことによって症状の改善をめざす短期精神療法のひとつの方法です。
(*2)対人関係療法
精神分析的な治療から発展したうつ病などに対する短期精神療法のひとつです。対人関係療法では、うつ症状などに影響を与えている人間関係の問題に焦点を絞ります。つまり自分の性格や過去の出来事にはひとまず蓋をしておきます。そして現在かかえている対人関係上の問題の中からテーマをひとつに絞り、その状況に対処できるようになることを目標にします。そのテーマとは、死や別れによる悲哀、夫婦などの対人関係上の役割をめぐる不和、役割の変化、対人関係の乏しさ、という4つの問題のうちのひとつとなります。
また、ご本人に対しておこなう精神療法とは別に、思春期の子どもを持つ親御さんを対象に、子どもの問題についてどのように対応したらよいかを話し合う親ガイダンスや、ご家族やご夫婦が同席してお互いの問題の解決をめざす家族療法、夫婦療法もあります。